革が残るのはなぜ?その原因とは
私たちは、靴の製造メーカーです。靴を作る工程の中で、どうしても素材となる革が残ってしまうことがあります。この記事では、その背景にある原因をわかりやすく説明して、革が余ってしまう理由を理解していただければ幸いです。
加えて、残った革を無駄にしないために私たちが実践している対策についても紹介します。量産品だけではなく小ロットの生産に取り組むことで、余った革を有効活用し、靴だけでなく様々な革製品の製作にも挑戦しています。残革を新たな価値として再生させる取り組みが、どのように持続可能なファッションに貢献するのかを知ることで、読者の皆様も自らの消費行動を見直すきっかけになるかもしれません。
革が残るとは?
革が残る現象は、製造プロセスにおいて生じる、その名の通り革の残余部分を意味します。靴の型を作る際に必要な革のサイズはデザインによって異なり、その際に出る革のカット残りや、部材として使用しきれなかった部分が革の残りを引き起こします。これが「革が残る」現象です。この現象は、靴業界だけでなく、鞄や服飾品の製造においても見られ、全体的な資源の無駄を呼び起こす問題となります。特に、裁断作業においては、デザインの特性やサイズによって、必然的に革の端材が多く生じます。このような残った革が無駄にされず、再利用されることが求められています。
一般的な例と影響
一般的な例と影響
靴を販売する小売店では、様々なデザインやカラーが求められるため、それに合わせて多様なレザーの種類が必要です。その結果、製造者側は大量の革を仕入れる必要があり、さらに余分な革が残るという悪循環に陥ります。このような革の浪費は、企業のコスト増加を招き、結果的に消費者価格にも影響を与えることに繋がります。
したがって、革が残る問題は製造業界全体にとって重要な課題です。持続可能性を考慮したビジネスモデルへの移行が求められる中で、残った革をいかに再利用し、無駄を削減していくかは、業界全体の将来的な発展を左右する要因となります。企業やブランドがこの問題に対する意識を高め、革の残りを効率的に活用することで、持続可能な製品の市場を築き上げることが期待されます。 会社の売り上げの多くを占めるOEM生産において、革が残る現象に対する取り組みはなんらかの形で社会的責任を果たすことにも繋がります。
革が残る原因
私たちが靴を制作する過程では、革の材料を無駄にしないよう努力をしているものの、さまざまな理由から革が残ってしまうことがあります。この残った革がどのように生まれるのかを理解することは、革の最適利用を考える上で重要です。
靴を作る過程における要因
靴の製造過程には多くのステップが含まれています。最初に行われるのはデザインです。この段階で、靴のデザインが決まると同時に必要な革のサイズや形も決まります。次に、生産においては、大量生産が行われるため、革を効率的に使用するための計画が重要になります。しかし、実際の裁断作業では、革の特性に応じた最適な型抜きが求められます。
例えば OEMによる量産品の場合、100足作るときは、100足すべて同じ仕上がりの商品を作ることが重要です。特に、自然由来の革を使用する際は、「革の厚さ」や「質感」を合わせながらの裁断は、高度な技術と経験が必要になります。財布やバッグのように1個で完成するアイテムと違い、靴には左右があるため、革の部分を選びながら裁断した場合、抜き型の周りに残る革の部分が生じるのは避けられません。
サンプル制作時に残る革
靴のサンプルは、シーズンごとに新作を作っていきます。
婦人靴の場合、23cmの左足を作ります。デザインと合わせて使う素材(革)も新作から選ぶことが多くあります。
企画段階で、黒、白、ベージュ、赤の4色のサンプルを作ったけれど、最終的に赤を他の色に変更することがよくあります。
牛革の場合、1枚の革の大きさは約100✖️200cmあるので、サンプルで使った40cm✖️40cm以外の部分が残ってしまうのです。
革の傷や色について
次に考慮しなければならないのは、革自体の状態です。自然素材である革は、製造過程でさまざまな傷やシミを持つことがあります。これらの傷や色ムラが発生すると、通常の品質基準を満たせなくなるため、使用不可能となる革も出てきます。特に、色に関してはオーダーがあるときに、色合いに違いが出てしまうことがあります。この場合、傷や不均一な色が含まれる革は、一定の美しさを求められる高級靴の製造には適さないため、余剰品として残されることが多いです。そのため、型紙から計算した数量よりも10%〜20%多く革を準備することになります。
革が残る現象は、私たち靴メーカーが直面する大きな課題であり、私たちのブランド「SHOESbakery」では、このような残った革をどのように活用するかに力を入れています。革の材料が無駄にならないよう、様々なアイデアを出して残りの革を利用したアイテムを展開することが、私たちの責任だと考えています。
革を無駄にしない対策
「SHOESbakery」は、革の廃棄を防ぎ、持続可能な製品作りを追求する靴のメーカーです。特にOEM生産において、残る革が経済的にも環境的にも無駄にされないよう、様々な対策を講じています。革の持続的な利用を促進するための取り組みを紹介します。
量産品ではなく小ロットでも作る
量産型の効率を重視する従来の靴製造では、大量の革を一度に使用するため、余剰の革が出やすいです。その一方で、私たちの「SHOESbakery」では、革が残らないように小ロット生産に重点を置いています。小ロットの生産では、必要な革の量を正確に予測し、実際に使用する革の量を抑えることが可能で、結果的に廃棄革を最小限に抑えることができます。これにより、少量の生産でも高品質な靴を提供しつつ、余剰革を生じさせないことを目標にしています。
靴に限らず革のアイテムも作る
私たちの取り組みの一環として、靴以外にも革製品の多様な展開を行っています。バッグや財布などと違って、靴には左右がありサイズもあります。最低でも右足と左足を同じ革で作らなくてはなりません。
革の余りを有効活用するために、靴のデザインだけでなく、革の小物、バッグ、ベルトなど、さまざまなアイテムを製作しています。これにより、残った革が無駄にならず新たな価値を生むことができるのです。例えば、靴の製造過程で生じた小さな端切れを利用して、コサージュやキーケースを作成し、革の風合いを活かしながら、エコな商品づくりを推進しています。こうした製品ラインナップを作ることで、魅力的で持続可能なファッションを選ぶ楽しみが増えればと思います。
小さくても革を楽しめる
革製品は高価なものと捉えられがちですが、小さなアイテムでもその魅力は十分に楽しめます。私たちの「SHOESbakery」では、例えばアクセサリーや小物入れなど、ちょっとした革アイテムを作ることで、革の質感やデザインを気軽に感じてもらう機会を提供しています。これにより、革を使用した製品を身近に感じ、お客様にとっても革と触れる新たな体験が得られます。また、こうした小ぶりなアイテムは製作にかかる革の量が少なくて済むため、余剰の革を有効活用できるのです。小さくても魅力的なデザインや機能性を備えた革製品を提供することで、私たちのブランドの強みを一層際立たせてたいと思います。
このように、革を無駄にしないための取り組みは、靴の量産から小ロット製造、靴以外のアイテムの製作、さらには小さな革アイテムの展開に至るまで多岐にわたります。私たちはこれからも、革の価値を最大限に引き出しながら、持続可能な製品作りに努めてまいります。